6月2日 超人スポーツ協会設立記念シンポジウム
超人スポーツ協会は、2015年6月2日に正式に設立しました。
これを記念して、豪華ゲストをお呼びして設立記念シンポジウムを開催し、立ち見が出るほど沢山の方にご来場いただきました。
また、当日の様子はニコニコ生放送配信だけでなく、テレビや新聞、雑誌やwebニュースに広く取り上げられました。
「設立記念シンポジウム」
日時:2015年6月2日(火)
場所:慶應義塾大学三田キャンパス 東館6F
まず始めに共同代表を務める中村伊知哉からご挨拶・超人スポーツの説明の後、来賓の方々からお言葉をいただきました。
■ご来賓の挨拶
・2020年オリンピック・パラリンピック東京大会推進室 室長 平田様
2020年に向けて、トップアスリートのみならず、日本中のあらゆる人が感心を持ち、障碍者スポーツを身近に感じるようオリンピック・パラリンピックを盛り上げて行きたい。技術を使ってスポーツを拡張するという試みが、オリンピックに平行して進められているというのはとても心強い。
スポーツという極限をチャレンジするというところから、こぼれ落ちる良いモノとして
・医学
・栄養
・美容
などの日常に還ってくるものがあったが、今回、テクノロジーが入る事で、もっと多様な「こぼれ落ちるモノ」が生まれそう。例えばパワードスーツなど、超人スポーツにはそれを期待している。
ただし、スポーツなので、フェアネスというのを担保することを心がけて欲しい。また、刻々変わり続けて行くテクノロジーを念頭に置いたルール設定も、「一度決めたから」といって固定してしまうと陳腐化するので気をつけてほしい。
フェアネス、ドーピング、色々問題があるが、それらを乗り越えた新たなスポーツが、世界から日本に求められている。サッカーワールドカップも8カ国から始まっているし、世界中に協会を置いて、世界巻き込んで行ってほしい。
パラリンピックに参加する国は、オリンピック参加より30国程度少ないのだが、その理由として発展途上国が中々障碍者スポーツに手が回らないためで、そういった問題も解決できると嬉しい。
・TBS取締役 菅井様
何故TVが最初から入っているのか、こういった取り組みをしっかり記録し皆さんに伝えたいからです。
今日の日を振り返ってみられるよう、今回は4Kで撮影しています。きっと2020年のオリンピックは4Kが基本になっているでしょう。
TBSはワクワクすることが好きです。日本最初の宇宙飛行士はTBS出身でしたし、今回超人スポーツの話が来た時に、どうなんだろう?という思いもある一方、これは面白いというのが勝り、参加することにしました。
TBSはSASUKEを持っています。日本のコンテンツは海外で売れないと言われているが、SASUKEは世界145カ国で放送されており、7カ国では、ローカライズされた番組すらある。
様々な苦悩や様々な努力について記録し伝えながら、日本から新たなスポーツを発信していきたい。
・慶應メディアデザイン研究科(KMD)委員長 稲陰様
大学の教員というのはスポーツが苦手です。
最初、超人という言葉を聞いた時は、如何なものかと思ったが、一方、エンターテイメント分野の研究者として、創作物の中で行われているようなバーチャルな必殺技が本当に出来るのであればとても良いのではないかとも思った。
KMDはグローバルに開かれている大学院。対してスポーツというのは、ご存知の通りグローバルなもの。第一歩として日本で始まるが、すぐに世界に網を張って、コラボレーションをしながら世界規模にしていきたい。KMDのコンセプトは、すぐ作り、作って広めるというもの。そういう意味では、超人スポーツはこれを体現しようとしている。
夢を実現するには、皆様のご協力も必要です。スポーツとテクノロジーが融合した新しい文化を是非とも一緒に作って行きたい。
■プロジェクトアップデート
協会内で走り出している超人スポーツプロジェクトの進捗報告をしました。
「CiP協議会」(CiP協議会事務局長 高橋竜之介様)からは、竹芝再開発計画として研究開発、人材育成、起業支援、ビジネスマッチングを行なっていく。このサイクルのひとつとして、超人スポーツを回して行きたい。開発スペースや競技スペースとしての利用、超人スポーツの開発拠点・普及拠点になることを目指す。
「超ブラインドサッカー」(日本ブラインドサッカー協会事務局長松崎様)からは、初心者とプロの差が大きく新規プレイヤーには敷居が高かったり、声を出した応援ができない等の問題を抱えるブラインドサッカーにテクノロジーを導入し改善するハッカソンの報告。
「超人スポーツハッカソン」・「文化祭」(事務局・安藤)からは、7月4日、25日-26日に開催するハッカソンと、クリエイターによる超人スポーツのビジョンを描くコンテストのご案内。
「ワークショップコレクション」・「第一回超人スポーツ運動会」(事務局長・南澤)
ここまでで述べた通り、超人スポーツという言葉を立ち上げたが、実はまだ中身は無い。中身を皆様と作って行く活動をどんどん進めて行きたい。テクノロジーが人間をどう変えて行くか、というのが一種超人スポーツのビジョンだが、それと近い世界観として、攻殻機動隊という作品がある。アニメの中では戦闘シーンが多いが、劇中の登場人物たちが休日に何をやっているのか、という観点から、その近未来の世界でのスポーツを考え実現していくプロジェクトもある。
ハイエンドをやる一方、子供達向けのスポーツとしてワークショップコレクションも行う予定。これは株式会社Meleapと世界ゆるスポーツ協会との共同で、未来のスポーツを子供達に体験してもらう。
また、未来の水辺というプロジェクトも進んでいる。例えば、「水の上を走る」という事が出来るようになったら、未来の水辺の使い方はどう変わるのか、というのをやっている。
こうした取り組みのまとめとして、10月に運動会を行う予定。
■パネルセッション テーマ:「超人スポーツの現実と創造」
・冲方 丁 様 小説家 /「攻殻機動隊 新劇場版」脚本
・高山 晃 様 株式会社ファンワークス 代表取締役
・土佐 信道 様 明和電機 代表取締役社長
・石戸 奈々子 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 准教授 / 超人スポーツ協会・理事
・暦本 純一 東京大学大学院情報学環 教授 / 超人スポーツ協会・共同代表
・中村 伊知哉 モデレータ
中村:これからの超人スポーツがどうなっていくのかを話して行きたい。前回、4月末のトークでは、6点、重要なポイントが出て来た。
・スポーツなんだから、身体性が大事。
・美しさが大事。パラリンピックは「頑張ってるね」感はあるが、まだ「美しさ」はないかも。
・楽しさが大事。
・参加型。皆がもっと参加出来るようにしよう。やるスポーツ!
・ポップ&テック。日本が得意とするところ
・産学連携。大学ももっと頑張れ
先程、平田竹男様からフェアネスという言葉もでたし、これも意識していかなければならないかも
【自己紹介】
暦本:スポーツとテクノロジーには3つの軸があります。
・Watch
新しいウェアラブルコンピューター。全方位カメラを被って、プロのアスリートのプレイヤーとオーディエンスが一体化する新しい観戦。
・Training
スポーツでは、自分を外から見る、というのは大事だが、それがドローン等を使うと出来るのでは?また、コーチをテレプレゼンスさせる事も出来るかも。
・Playing
プールの中は面白くない。そこで、VR技術を使い、水槽の周囲に映像を出してエンターテイメント性を強調したり、トレーニングに使ったり。
ホバーボールでは、ふわっと飛ぶボールが出来る。ある種、物理法則を塗り替えた新しいボール競技が作れるかもしれない
IoTの次に来るのは、Internet of Abilities(IoA)。自分で出来る → 達成感・充足感 → 尊厳・幸福
単に「可能」ということでなく、「自分で出来る」というところを可能とする。
冲方様:活字を通して色んなメディアと連携していこうということをしている。直近の作品だと、攻殻機動隊の新劇場版。サイボーグ化と、それが生産・量産化された時にどうなるか、というのがテーマで、初期の技術によってサイボーグ化された人と、それを元に洗練された技術でサイボーグ化された人との格差を描いている。
研究者・科学者と一緒に、未来へのイマジネーションを高めて行こう、ということで、超人スポーツに参加しました。
土佐様:超人スポーツと聞いて真っ先に思いついたものは、アストロ球団(ドーピング、反則、なんでもあり)です。実は僕もスポーツは苦手で、汗をかくのはサウナくらいだったが、最近スポーツに関わることもやりました。
ウェアラブルトマト(スポーツのお供としてバナナに勝ちたい。カゴメと一緒に作ったもの)
ウェアラブルトマトは、スポーツとしては非常にナンセンスなもの。しかし、スポーツというのは制約から生まれる。ルールや制約で縛ることで、新たなものが生まれる(ex. カポエラ)そういう意味で、拡張するという方向の超人スポーツは難しいのでは・・・?
高山様:超人スポーツのアニメを作りたい、という相談を伊知哉先生にしたら、相談する前にいきなり呼ばれちゃったので、伊知哉先生の前に皆様にプレゼンしちゃいます
ファンワークスは「やわらか戦車」をはじめとして、エージェントとして色々作って来ました。「東京オンリーピック2008」ではスキージャンプペアの方と一緒に「架空の競技のスポーツ大会を開催」をテーマに20競技くらい作り、劇場で3時間くらいのものが出来た。
超人スポーツ2020アニメ化プロジェクトをやりたいと思っていて、アナログから最新技術まで駆使し、すべての参加者・観戦者が楽しめる体験型のアニメーションを制作!ファンワークスや超人スポーツ、竹芝CiPを軸に、産学官連携、国内外クリエーター巻き込んでわいわいやりたい
石戸:これまで子供達がモノを作る場、というのを提供して来ました。
・ワークショップコレクション
・プログラミングワークショップ
なので、超人スポーツでは「子供達が考える未来のスポーツハッカソン」など2020年に折角オリンピックが来るので、子供達の記憶に残る様な参加型の企画をしたい。
例えば….
・410人リレー vs マラソン選手(子供はひとり100m)
・応援合戦(盛り上がり方を判定して勝負)
・世界同時中継でラジオ体操
・3Dゴーグルでパン食い競走
・世界の人から借り物競走
・一人組体操
・ペアでミッションクリア型の共同スポーツ
・動物とサイネージで対決
・魔法でスポーツ(アニメの世界を実現)
・座禅オリンピック(身体が動かせない子でも参加出来るもの。脳波とか使う)
・石ころトライアスロン(子供が自分でスポーツを作る力を蓄えられるようなもの)
などなど!
中村:新しい競技を作るという真面目な話をしたいのだが、ゆるーくなるのは何故なのだろうか…さて、残された時間で幾つか質問をしていきたい。
【新しいスポーツをどう考えるか】
石戸:超人スポーツの活動について、どう思うのか、を聞いてみたい
中村:皆様のプレゼンの中で色々出て来たが、「こういったものを作ればいいんじゃないかな」というアイディアを聞いてみたい。
高山様:超人といえば、宮本武蔵が出てくる。宮本武蔵は孤高のイメージがあるが、皆で作って行ければと思う。開かれた歌舞伎、開かれた相撲というイメージ。モンゴルの人が横綱になってもいいように、日本がプラットフォームとなって、色んな人がそこから飛び立てて行けるようなものがいいのでは?
土佐様:メーカーとして、スポーツが広がるためには、スポーツの道具が安くなければならない。
安いのにあんなに面白い、貧乏でも楽しめるスポーツは競技なので、競うというところがある。競うという事は判定があるので、計測が出来ないと行けない。新しいスポーツを作った時に、どうやって図れば良いだろう?例えばスケートなどは基準を作って「美しさ」などを判定しているが、そういうのをどう設定するか。僕的には「面白い」という判定を作って欲しい。「面白い方の勝ち!」
冲方様:大前提として、共有されるものがないとリアリティが生まれない。様々な将来のスポーツというのが想像されてきているが、悲劇的要素:「機械の力を借りなければ、人としての動きが出来ない」という文脈があった。サイボーグが悲劇、というのはもうそろそろ脱却出来るはず。ようやく出来るようになった。昔は不謹慎だった。戦争の後遺症でサイボーグ化、なんていうのが常だったわけだが、きっと自分からサイボーグになる。
架空のスポーツの中で、世界で一番普及したスポーツにハリーポッターのクィディッチがある。
何故、あれが良かったのか?
・箒に乗るというフォルムが格好良い。
・それを周囲がはやし立てる。(お店や解説者や観戦者)
・結果、架空のものでも凄さが分かってくる。
・解説の重要性。
プレイヤー、お客さんと、「凄さ」をどう共有するのかが重要なのでは?
暦本:ホバーボールはクイディッチから着想を得たが、今度は人を飛ばしたい。
色んなスポーツはアクセシブルを意識しているが、一個くらいはエクストリームなものが作りたい。
一握りの人しか出来ないような物凄いもの。スポーツは、上手い下手が大事。競争心と補助のバランスを上手く取ると良いのでは。
中村:19世紀初頭に近代五種というのが生まれた。これは戦うためのものを集めたが、超人スポーツの五種は何なのだろうか?
石戸:実は登壇前に高山さんから「これはスポーツなのか、遊びなのか」と聞かれた。たしかに、スポーツでありつつエンターテイメントの要素も含んでいる。超人スポーツの定義は何なのかをもうちょっと考える必要がある。
中村:ビジネスとしてどれだけ芽があるのかというのも
冲方様:飛ぶ、というシンプルなテーマは良い。水を噴出して飛ぶという道具があったが、あれは使えるのか?安全性、というのがひとつ問題がありそう。
土佐様:明治の使節団は、体操をみて大笑いしてた。「平均台って何だよww」みたいな。でも、これは超人スポーツでも起こりうるわけで。XSportsみたいなカルチャーを作る必要がありそう。
石戸:たしかに暦本先生の言うように、エクストリームなのも面白いが、皆が参加出来る意義もあるのでは。
暦本:新しいスポーツはスカッシュ。案外古い。多分、皆スポーツを作れると思ってなかった。知らなかった。
でも、今こうして門戸が広がることで、色んなクリエーター(や、クリエーターじゃない人)にも取りつく島が出来る。
土佐様:じっとしてるっていうのはどうか?情報化社会の皆様は得意そうだがどうか?
冲方:じっとしてる、ということなら、プレイヤーは何をするのか?きっと相手をじっとできないようにするのだが、実は柔道やレスリングもそういうもの。じっとさせないように動かす。これは機械でも出来そうな気がする。
暦本:見るのとプレイするのが一体になっている。プレイヤー1人にファンが20万くらい入っている
土佐様:選択肢が増えると面白くなりそう!痛みを感じる観戦、というのはどうだろうか?
暦本:痛そうな映像にタクタイルをつけると結構痛いんですよ。
土佐様:臭いのはできるんですか?スポーツは、結構臭いはずで、そういう情報をどう伝えるか。同じ空気を味あわせる嗅覚ディスプレイとか。
冲方:ローマのグラディエーターじゃないが、自分が痛くないから楽しめるのではないか?
感覚共有はトレーニングにはいいのでは?超人的な技を繰り広げた人の五感を共有して、トレーニングして、自分で出来るようになる、とか。
中村:実はそういった研究ありますよね。そして、そっち方向だけでなく、今まで出て来たような、
プレイヤーと一体化する(五感や雰囲気の共有)というのも、やっていく必要ありそうですね。
【日本が本場になれるチャンスはあるか?】
土佐様:鎖国…ですかね?精神的鎖国。
大砲が外国から入って来たときに、日本は花火にしちゃった。戦争用の道具なのに。これと同じように、一旦海外から取り入れて、それを日本でぐるぐる回してぽんと出すと面白いかも。「日本は面白いから滅ぼさないでおいてやろう」という感じになるかも!
冲方様:一理ある!
京都も、戦争の時に守られたのは、そういう理由だったし
高山様:日本は変な人が多いから、こういうのが生まれるんだろうなと思う。アニメにしても、パッケージは難しくなってきたから色々出て来た(Web配信とか)それと同じように、新しいモデルを作ることが出来るのではないだろうか。
日本の強み:英国一家でいうと、「出汁」だった日本では普通のことだったものが、海外に再発見され評価される。日本には、そういうものがまだまだ残っているかもしれない。英国一家は和食を掘り起こせたが、まだまだ掘り起こせるジャンルは一杯ある。
【超人スポーツの未来】
中村:次に未来展望を聞きたい。2020年、2030年、シンギュラリティの起こると言われる2045年などなど
暦本:自動運転や人工知能のように、「やらなくていいこと」は増えてくる。その時に、「やりたいもの」として、スポーツは残るはず。
冲方様:テクノロジーが発展して人間が得た一番のものは、時間。今、余った時間を買う人間と売る人間に分かれているが、これがコンピューターに制御されるようになると、自分が自由に使っていると思っている時間は、実は管理された時間になっているかもしれない。
スポーツというのは、自分の時間を未知のものにつぎ込むことなのかなと。何が起こるのか分からない、未知の何かが常にそこにあるのがスポーツ。人間が未知の何かを追い求める感覚を忘れたとき、コンピューターが有意になるだろう。そんな風に思う
土佐様:オリンピックの年、2020年。明和電気はお土産屋を作って儲けたい。そこで新しいスポーツのものが出せればよいと思う。
高山様:今まで技術を活かしたモデルということで、VRとか色々やろうとしてきたが、「最後は芝生に戻る」と言われた。原点みたいなところを外さずに、考えて行くというのが重要。
石戸:あまりにも子供達の感覚が違う。テクノロジーの進歩が凄過ぎて、人間の根源的な感覚すら変わっているのではないかと思う瞬間が多々ある。これを大人が考えていていいんだろうか?と思う
60%の職業が無くなっていると言われているが、スポーツもひっくり返っているかも。2020年はゴールではなくスタート。
中村:ちょっと消化不良なくらいで止めておくが、このもやもやを解消したかったら、皆さんに会員になってもらって、一緒に作って行きましょう!